「あれ?エレベーター止まったな」B

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:31:00.60 ID:94X/lxM/P
男「俺の親父がさ…そういう仕事をしているんだ」

だから、俺もその道の職業に就くことになる。

そんな、単純な理由だった。

幼女「ふぅん…」

男「おまえのお父さんは何の仕事をしているんだ?」

幼女「お父さんはねえ、新幹線のパイロット!」

男「ほう…」

新幹線の運転士らしい。

そして、彼女は父親の様々なことを話してくれた。

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:36:16.91 ID:94X/lxM/P
男「お父さんのこと…好きか?」

幼女「うんっ!」


彼女は、笑顔でそう強く頷いた。

今まで見た中で一番輝いていて、一番子供らしい表情だった。


男「そうか…」

自分とは正反対だな、と思った。


かつて俺は、役者を目指していた。
沢山のオーティションにも受けたが、採用してもらえなかった。

だが、俺は諦めなかった。一生懸命、頑張り続けた。

でも…、
それでも親父は認めてくれなかった。

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:41:29.25 ID:94X/lxM/P
男「おまえは…将来の夢とか、あるのか?」

幼女「将来のゆめ?」

男「ああ、なんかやりたいこととか無いのか?」

幼女「うーん…」


彼女は暫く考え込んだあと…、

幼女「…わからない」

そう言った。

男「そうか」


俺は今日までこの子を見続けてきて、一つ思ったことがある。

どこかでみたことあるような…、そんな事。

(まぁ、同じマンションに住んでいるんだしな…)

どこかですれ違っているのかもしれない、とそう思った。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:46:02.08 ID:94X/lxM/P
次の日もエレベーターは復旧せず、ついに3日目に突入した。

その3日目というのも、ただの体感上の話。

(……)

実際の時間感覚が狂ってきているため、気分さえ悪くなってくるようだった。


男「……」

幼女「……」

そして、室内はひどいくらいに蒸し暑さが立ち上っていた。

換気扇が作動しない為だろう。

真夏というのもあるが、熱中症にもなりかねないほどの暑さだった。

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:50:54.31 ID:94X/lxM/P
幼女は、敷いてある上着の上で丸くなっている。

俺はビニール袋の中に手を入れた。

何か飲み物がないか、探していた。


先日幼女に渡したコーラはもう既に尽きている。

それ以外に水分が補給できるものは、何本かのビールと大量にある飴玉くらいだった。


男「大丈夫か?」

幼女「う…ん…」

彼女は飴玉を舐め続けていた。

もう何個食べたのか、忘れてしまうくらいの量を。

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 21:55:28.39 ID:94X/lxM/P
どうするか…。

(さすがに、ビールは飲めないよな…)

試しに、ビールを差し出して「飲むか?」と訊いてみたが彼女は

幼女「…飲めないよ」

と言い断られた。

昔、父親の酒を誤って飲んでしまったことがあると言った。
少々トラウマを植えつけられているらしい。

男「そうか…」

しかし、このままでは…な。
自分はともかく、この暑さでは彼女は熱中症になりかねないだろう。

俺は考えた末に、幼女に声を掛けると…

男「今すぐ服脱げ」

そう言った。

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:00:36.98 ID:94X/lxM/P
幼女「え……?」


何を言っているの?

そんな風に、彼女の顔が不安に満ちた。


俺は彼女に説明をした。
この暑さで服を着ていたら死んでしまう、と。

幼女は顔を赤くし、「うん…」と俺の言う通りに従った。

後ろを向いて、彼女はぶかぶかのパーカーを脱いだ。

男「…よし」

すると、俺はビールのプルタブを開け

幼女「ひゃっ」

彼女の背中にビールをかけた。

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:06:17.15 ID:94X/lxM/P
幼女「な、なにしてるの…?」

男「いいから」

そのまま、幼女の体にビールをかけ続けた。

幼女「……」

アルコールのは優れた低温物性があり、冷却効果がある。

たしか、そんなことを何処かで聞いた覚えがあった。


(しかし、この暑さじゃ…効果があるかどうか分からないが)

とりあえず、これで一時を凌ぐしかない。

室内には、酔ってしまうんじゃないかと思う程のアルコールの匂いが充満していた。

いったい、いつになったら助けがくるのだろうか…。

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:11:18.48 ID:94X/lxM/P
男「あ…」

幼女「どうしたの?」

しまった…。

エレベーターの床には、ビールの水溜りが出来ていた。

それが室内の半分を占めていることに、今更気付いた。

男「…いや、なんでもない」


彼女の寝床だった場所が、無くなってしまった。

(…しょうがない)

今夜は自分の元で寝かせるしかないだろう。






216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:16:26.24 ID:94X/lxM/P
それから何時間かして、眠気が表れ始めた頃…。

恐らく外は夜になったのか、暑さは大分ましになっていた。

幼女「すぅ…」

エレベーターの元々狭い部屋の中――さらにその狭いスペースで、彼女を後ろから抱きかかえていた。

昼間のサウナのような暑さで、疲れてまったのだろう。

抱えられた幼女は、そのまま眠っているのか静かに寝息を立てている。


(……)

可愛らしい、天使のような寝顔だった。

俺は彼女の前髪をたくしあげると、おでこを優しく撫でてやった。

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:19:53.71 ID:94X/lxM/P
幼女「…すぅ」

男「……」

両親にも、友達にも会えなくて辛いことだろう。

こんな狭い部屋の中に閉じ込められて、精神的にもかなり辛いはずだ。

それでも泣かずにじっ耐えているこの子は、本当に強いんだと実感した。


(もし、このまま――)

仮に、このまま助けがこないのならば…

この扉をこじ開けて、無理やり脱出するしかないのだろうか?


ふとビニール袋の中を覗くと、残された食糧は…もう後わずかしかなかった。

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:25:01.18 ID:94X/lxM/P
閉じ込められてから、4日が経った。

さすがに、自分も精神的に大分きている。

牢屋に閉じ込められた囚人というのは、こんな気持ちなのかもしれない。


男「ふー…」

エレベーターの扉を少し開け、タバコをふかす。

灰を落とす際に、なんとなく扉から下を見下ろしてみた。

しかし、下界は闇で覆われている。
(……)

恐怖感を煽るように、強い風が吹き上げてくる。

…ここから落ちたら、いったいどうなるのだろうか?

ふと、そんなことを考えてしまう。

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:30:22.25 ID:94X/lxM/P
恐らくここは、4階か5階くらいの高さ。

落ちても死なないと思うが、まず骨折ま免れないだろう。


男「……」

扉から手を出し、ライターでコンクリートの壁を照らしてみた。

壁には鉄骨が何本かあり、足をかけられそうなものがいくつかある。

もしここから脱出するとしたら、どんなルートでいけるのだろうか?


そう思った俺は、扉を広く開け、ためしに手前の鉄骨に足を掛けてみた。

男「う……」

下からビュンビュンと吹き上げてくる風のせいで、バランスを保つのが難しい。

(やっぱり脱出は無理かなぁ…)

そう思って、鉄骨から足を離してエレベーターに戻ろうとしたその時…

男「――っ!」

幼女が腰にしがみついてきて、その場でバランスを崩した。

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:36:07.49 ID:94X/lxM/P
その瞬間、背筋にゾクッと寒気のようなものが伝い、体中から冷や汗のようなものが噴出した。

そのままバランスを崩した俺は、前のコンクリートに前屈みの状態になった。


男「……くっ」

目先の深い闇から吹き上げてくる風が前髪をなびかせる。

俺はエレベーターの扉につかまり――

男「はぁっ…はぁっ…」

なんとか元の体勢に戻ると、その場に倒れ崩れた。


男「なッ――何すんだ!この馬鹿!!」

幼女「…っ」


気付けば、俺は彼女に向かって怒鳴っていた。

254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:41:14.98 ID:94X/lxM/P
幼女「ひっ…ごめんなさいっ!」

彼女は頭を抱え、その場にしゃがみこんでうずくまった。


男「はぁ…はぁ…」

俺は出口の扉を閉めると、その場に座り込んだ。

今でも、足がガクガクと震えている。
未だに心臓の鼓動が鳴り止まない。かつてないほどに、体が震えていた。


幼女「…ぐすっ」

しばらくすると、幼女の泣き声が聴こえてきた。

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 22:45:54.76 ID:94X/lxM/P
男「お、おい…泣くなって」

幼女「うっ…うぁ…ぐすん」


確かに、怒鳴った自分が悪かったかもしれない。

さすがに、大人気ないことをしたと思った。


男「すまん…ほら、突然大きな声で怒鳴ってわるかったな」

幼女「……」


俺は、しばらく幼女の頭を撫で続けていた。

「あれ?エレベーター止まったな」Cへ続く
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