カツオ「姉さん……それはタラちゃんじゃないよ」B

184 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 01:52:22.60 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
ワカメ「姉さーん!こ、……」

一歩先に部屋へ踏み出したワカメ、その足が止まった。

カツオ「ワカメ?」

僕は固まってしまった妹を押しのけるように姉さんの部屋を覗きこむ。

カツオ「姉さん……?」


196 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 01:55:01.74 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
ワカメ「いやあぁあああ!」

ワカメは悲鳴を上げると手に持っていた盆をひっくり返しながら、その場から走り去った。
僕は何も反応することが出来ずに、姉さんの事をただ眺めていた。

部屋中に散乱する白い綿。
縫いぐるみにぎゅうぎゅうに詰められていたそれを全て引きずり出したようだ。

抜け殻のようになった布を抱きしめた姉さんが虚ろな目でこちらを眺めていた。


204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 01:56:24.28 ID:k/KyHbaVO
うわぁ・・・


216 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 01:57:53.84 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
サザエ「……」

なにやら懸命に口を動かす姉さんに、始めは何かを話しているのかと思ったけれど、違ったようだ。

中身の抜けた縫いぐるみを持ったのとは逆の手を口許に運ぶ、その手には綿が一掴み握られていた。

姉さんはそれを食べていたのだ。


238 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 01:59:50.14 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
サザエ「……」

僕は状況を理解するのに少し時間がかかった。
その間にも姉さんは何度か手を動かし、口いっぱいに綿を詰め込む。

サザエ「うっうううぐっ」
カツオ「姉さん!」

姉さんの苦しそうな声に僕はようやく動くことが出来た。

カツオ「何やってるんだよ……!」

僕は姉さんの口に手を突っ込むと、中の物を掻き出そうとした。


248 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:02:09.59 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
カツオ「なんでこんな……窒息しちゃうよ!!」

姉さんは綿を次々に飲み込んでいたようで、僕はそれを吐かせなくては、と
片方の手で背中を叩き、もう片方の手の指を喉の奥へと押し込んだ。

サザエ「うあえっえおぉ」


257 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:03:37.05 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
カツオ「痛いっ!!」

姉さんは苦しかったのか、僕の指の付け根を強く噛んだ。
僕は痛さに指を引いたけど、噛み付く力が強すぎて抜けない。

サザエ「ふうぅうう、ふうぅううぅ」

姉さんは荒い呼吸を繰り返している。
僕は空いている方の手でその背中をさすった。
噛み付かれた手は姉さんの口の中で血を流しているようで、指を伝い赤いものが見える。


266 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:06:15.81 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
フネ「サザエッ!?な、な、なんだいこれは……」

ワカメが呼んだのだろう、母さんが部屋に入ってきた。
一瞬動揺したようだが、気丈な彼女はすぐに状況を把握し、僕らの側に座る。

フネ「サザエ、サザエわかるかい?ほら、カツオの手を離しておやり」

サザエ「うぅう……」

母さんの言葉が届いたのか、一瞬顎の力が弱まった。
その隙に僕は手を抜いた。

かみ砕かれ無かったのは幸いだけど、指の根本には引き裂かれたような傷がついていた。
鋭利な刃物でつけられた傷よりも、そうでない物で切られた方が酷い怪我になるという。
この傷はしばらく残りそうだ。


269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:07:04.02 ID:eqoxQXqB0
フネさん・・・うっかり惚れちゃいそうだ


274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:07:48.32 ID:5J3cyOFzO
VIPだといつもフネがイケメン


278 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:09:33.92 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
フネ「ほらゆっくり口の中のものを出しなさい、苦しいでしょう」

サザエ「うあぉお」

姉さんは母さんに背中をさすられながら、口の中の綿を吐き出していく。

僕の血で染まった綿は、まるで真っ赤な髪の毛のようにみえた。

サザエ「あぁあっ……たらちゃ……が」

フネ「サザエ、これはタラちゃんじゃないんだよ……」

サザエ「ううぅうああぁあ」

姉さんは母さんの膝に顔を埋めるようにして泣いていた。


284 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:12:06.19 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
次の日、何もかも元通りになったかのようだった。
母さんと姉さんはいつも通り二人で並んで朝食の支度をしていたし、笑い声も響いていた。

ただ、そこにはもう縫いぐるみはなかった。

ワカメは昨日の出来事がショックだったのか口数が少なかったが、明るく笑う姉さんを眺める視線に暗いものはなく、
学校に行く時間にはいつもの彼女に戻っていた。

縫いぐるみをタラちゃんと呼んでいた姉さんは以前と変わらないようでいて、やはりどこか異様だった。
だけど今朝の姉さんは昨日までの姉さんとは雰囲気が違っている。

きっと姉さんもタラちゃんを失ったショックから立ち直り、現実を受け入れられるようになったのだ、僕はそう思っていた。


289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:13:11.19 ID:rKY4STx30
思って…いた……?


299 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:14:41.09 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
カツオ「ただいまー」

学校は何事もなく終わり、僕は家に帰って来た。
台所では姉さんが昨日のハンバーグで使った残りであろうひき肉をこねていた。
母さんは買い物にでもいったのか、ワカメはまだ帰っていないのか、二人とも姿が見えなかった。

僕は別段気にも止めずに、駆け足で部屋へと向かう。
中嶋たちが野球をするためにいつもの公園で待っているのだ。
昨日の姉さんに噛まれた傷口も、巻かれた包帯こそ痛々しいが、痛みはすっかり引いていた。

僕は早く出掛けたいために、はやる気持ちを抑え切れずに机の上にランドセルを放り投げた。


325 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:17:39.33 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
衝撃でランドセルの中身が散らばるが、気にしてはいられない。

カツオ「いってきまーす!」

靴を履く時間ももどかしく、僕は公園へと走りだした。
だけどしばらく走った後、バットとグローブを忘れて来たことに気がつき、僕は元来た道を引き返すことになった。

カツオ「お、ワカメも帰ってきたのか」

入れ違いになったのだろう、僕が玄関に戻るとワカメの靴が揃えて置かれていた。

カツオ「……姉さんはどうしたんだろう」

さっきは台所にいたはずの姉さんがいない。

だけど早く野球に行きたい僕は特に気にも止めずに自分の部屋へと急いだ。


338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:19:06.10 ID:CLW3Cy1KO
画像


347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:20:05.45 ID:a7DdNSPQ0
>>338
なにこれこわい


342 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:19:48.53 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
カツオ「あれ」

てっきり部屋にはワカメがいるものだと思っていた僕は、だれもいないことに拍子抜けしてしまった。
姉さんの部屋にでもいったのか。

カツオ「姉さんの……部屋」

僕は昨日の出来事を思い出し、少しだけ顔をしかめた。
何故だか胸騒ぎがする。

だけど机の上にぶちまけられたかばんの中身に目をやると、そちらに気を取られて勘違いのような不安なんて吹き飛んでしまった。

カツオ「これは……」


369 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:21:51.16 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
カツオ「まずいまずい、テストの答案がまる見えだ」

今日返された限りなくゼロに近い数字がかかれた紙切れを僕は慌てて拾いあげる。
こんなものが姉さんに見られたら大目玉だ。
その答案用紙も含め、散らばった荷物をそのままかばんに詰め直し、僕は目的のバットとグローブに手を伸ばす。

その時、廊下の方から物音が聞こえた。


385 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:24:41.87 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
ズル……ズル……と何かを引きずるような音。
そして言葉までは聞き取れないが、何かをぶつぶつと呟くような声。

カツオ「姉さん……?」

僕は何故かその音の正体を確かめることが出来なかった。
襖を開け、廊下に出てしまうのは簡単なのに、どうしても足が進んでくれない。

カツオ「こっちに来てる……?」

その場に動けないでいるうちに、姉さんの声は確実に近づいてきているのがわかる。

昨日姉さんの部屋の前で感じた、警告音のような嫌な感覚が全身に広がる。


398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 02:26:10.89 ID:PCTcWNPNO
怖い…怖いよ


401 :源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/05/23(土) 02:26:24.25 ID:DSAeDx70O ?2BP(2627)
姉さんはいったい何をしているのか確かめたい。
この場から逃げ出してしまいたい。
確かめなくては。
逃げなくては。

二つの感情が僕の頭の中で渦巻いて結論が出ない。

逃げようと思えば窓からでも逃げられるのだし、確かめるのには廊下に出てしまえばいいのだ。
だけど僕はそのどちらも選ばず、部屋の中に留まることにした。

押し入れの中に身を隠し、息を潜める。
姉さんがこの部屋に入るとは限らないが、もしもの場合にいきなり鉢合わせてしまう事態を避けるためだ。

カツオ「姉さん……それはタラちゃんじゃないよ」Cへ続く
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