勇者『魔王倒したし帰るか』C

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:02:46.75 ID:5Ug8BclXo

勇者「僧侶が見つけたとき、俺はっつうか、俺だったモノは指のかけらぐらいだったみたいでね」

勇者「普通、人が蘇生するためにはその人のパーツ、肉片でも灰でもいいんだけれど、半分以上は欲しい。せめて2/3は欲しいってのが常識でして」

勇者「つまり俺の蘇生は絶望的。ここで僧侶も諦めて帰っちゃえばよかったのになーとは今でも思う」

勇者「でも僧侶は諦めなかった。俺の身体の再生と蘇生を実行することにしたんだ」

勇者「と、ここで突発問題! ここで更に問題が発生します! それはなんでしょーか! 王様でも姫様でも、どちらが答えても構いません!」

王様「…………」

姫様「そういう気分ではございません……」

勇者「あーあ、残念。えーっと、勇者マークは……あー、足りてないねー。まあ後からだね」

王様「?」

姫様「?」

勇者「さてその問題とは、蘇生魔法は難易度の高い魔法だってことです」




40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:16:44.94 ID:5Ug8BclXo

勇者「元々、蘇生魔法を使う場合、簡易的な結界みたいなものを張って使うんだけれど、ここは魔王の城な訳で」

勇者「そんなもん張ったら、一発で魔王にバレちゃう可能性が高い。つうか確実にバレる」

勇者「そうなると俺の蘇生どころの話じゃないわけで」

勇者「更に、使う魔力だってべらぼうに必要で、今回はそれに高等な再生の魔法もミックスしなきゃいけないときたもんで」

勇者「もうねー、奇跡でもおきない限り無理! 無理無理無理無理かたつむり!ってぐらいの無理難題だったのよ」

姫様「ですが、勇者どのがここにいらっしゃるということは」

勇者「うんそう。でも、奇跡なんて起きてないよ」

姫様「え? でしたらつまり?」

勇者「すげえ強引な手を使ったんだあいつ」

姫様「強引な手?」

勇者「そ。だから死んだんだ」




41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:22:47.99 ID:5Ug8BclXo

勇者「俺が気付いたとき、辺りは真っ赤だった」

勇者「身体を再生して、死んでたところを無理やり引き戻されて、痛みや吐き気で転げまわっってた」

勇者「でも嬉しかった。僧侶が必死になって蘇生させてくれたんだとわかってたから」

勇者「だから、ゲロをまき散らしながら、がくがく震えながら、それでも立って僧侶を探したんだ」

勇者「でも、僧侶は僧侶じゃなくなってた」

勇者「あたり一面に割れた回復の薬のビンや、使い終わったスクロールなんかが落ちてた」

勇者「どれも魔力を回復するためのシロモノだったよ」

勇者「僧侶が何をやったのかは簡単な話だ。色んな工程を魔力で強引に押し切ったってだけ」

勇者「当然、そんなことしたら魔力なんてすぐ空っぽになるわけで」

勇者「なので、無くなるそばから薬をがぶ飲みしたりスクロールで強引に回復させて、また魔法を使ってって訳」

勇者「でもなー。人の体って、限界みたいなものがあるじゃん?」

勇者「僧侶がやったのは、その許容量を遥かに越えるような事なのよ」




42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:26:34.85 ID:5Ug8BclXo

勇者「そして僧侶は……」

王様「魔力に耐えられず、消滅……?」

勇者「だったらマシだった」

勇者「部屋の端っこにね、もぞもぞ動くものがあったんだ」

勇者「なんだろー?って思って近づいてみたら、子供ぐらいの大きさのピンクの肉がもぞもぞしててな」

姫様「や……やめて……」

勇者「やめねえよ。お前らが楽しみにしてたみんなの話だ。聞けよ」

勇者「あいつなー、僧侶なー、回復魔法を垂れ流すだけの肉の塊になってたんだよ」

勇者「どっかの文献にあったんだけど、回復魔法を延々と流し続ける石ってのがこの世にはあるらしくてさ」

勇者「僧侶は、多分それに近い物になったんだと思う」

勇者「つうか、そんな石より凄いもんになったとも言えるね」

勇者「それって一抱えぐらいあるんだけれど、持ってるだけで傷が治っちゃうのよ」

勇者「そんで、持ってたら僧侶の声っていうか、意識みたいなのが流れてきた」




43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:30:41.84 ID:5Ug8BclXo

勇者「『食え』」

王様「は?」

姫様「え?」

勇者「いやだから『食え』って言われたの」

王様「え? いやその……」

姫様「何を……?」

勇者「僧侶だった肉を」

王様「…………」カタカタカタカタ

勇者「だから食った」

姫様「そんな……僧侶どのの最後がそんな……」

勇者「ああ、勘違いしないでね。僧侶は俺を蘇生してる時に死んだんだよ」

姫様「でも、先ほど僧侶どのは、その、肉に」

勇者「肉は肉。あいつと一緒にするな」

姫様「す、すみません!」




44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:36:19.75 ID:5Ug8BclXo

勇者「とまあ、そんな訳で勇者パーティーは全滅しましたとさ。おしまい」

王様「全滅? で、ですが勇者様は」

勇者「ああ、俺? んー、どうなんだろ? 今の俺って勇者って言えるのかね?」

勇者「勇者ってのはさ、人のために生きて、人の為に魔王を倒す人でしょ?」

勇者「俺はさ、肉を食った瞬間から、いや違うな。もうずーっと前から、人の為になんか戦ってなかったと思うんだ」

勇者「誰かのために戦ってたんだとしたら、仲間の為なんだと思うよ」

勇者「そういう意味じゃ僧侶が死んだ瞬間、俺はもう勇者なんかじゃなくなってたんだと思う」

勇者「一応ね、魔王は倒したよ。そりゃねえ、常に回復しっぱなしの状態ですもん。例え即死魔法打ち込まれても死ねないとかどうなのー?って感じですよ」

勇者「あー、そうだ。もう一個、重大なことがあるんだ」

王様「一体、これ以上に何が」

勇者「そう難しいことじゃないよ。簡単簡単。僧侶の願い事なんだ」




45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:45:32.14 ID:5Ug8BclXo

王様「僧侶どのの願い?」

勇者「そ。願い。あいつさー、魔法使いが死んじゃった後、俺に言ったんだ」

勇者「『もう二度と、勇者も、勇者の仲間も現れない世界にしてください』って」

勇者「惚れた弱みってやつだね。俺もうんって頷いちゃったんだ」

勇者「だからその願いを叶えたい」

王様「そ、それは魔王を倒して欲しいという事では」

勇者「んー、そりゃ今の時代ってだけでしょ?」

勇者「魔王ってのはさ、例え今倒したとしても、いつかまた新しい魔王が産まれちゃう。数百年後か数千年後かはわかんないけどさ」

勇者「時代が証明してるよね」

勇者「だから俺は考えた。どうすればいいのかなーって」

勇者「そして思いついた。僧侶は魔王の出ない世界にしてくれといったわけじゃない」

勇者「勇者の現れない世界を望んだんだ」




46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:48:29.29 ID:5Ug8BclXo

小さな農村

魔物の老婆「はいおしまい」

魔物の少年「ニンゲンって馬鹿だねー」

魔物の少女「ねー」

魔物の老婆「はいはい、お話は終わったんだからもう寝なさい。悪いニンゲンにさらわれてしまいますよ」

魔物の少年「えー、弱っちいニンゲンぐらい大丈夫だよ。この前、2頭も仕留めたんだもん!」

魔物の少女「でもニンゲン怖いよ? ガーって襲ってくるもん」

魔物の老婆「さっきも話したでしょう? ニンゲンは今でこそこうだけれど、昔は頭のいいニンゲンや強いニンゲンだっていて、魔物を襲ってたんだよ?」

魔物の少年「はーい……」

魔物の少女「おやすみおばーちゃん」

魔物の老婆「はいおやすみなさい」

魔物の老婆「ふぅ……最近は凶暴なニンゲンが増えてきたし、困ったもんだよ……」

魔物の老婆「でも、きっとニンゲンの魔王を倒してくれる魔物がきっと……」




47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:49:06.96 ID:5Ug8BclXo

どこか

魔物の青年「魔王よ、何か言うことはあるか?」

「あー、二つほど」

魔物の青年「何だ」

「俺は失敗した。次は……お前の番だ」
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