ゾンビ大量発生はどのようにして現実に起きるか

ゾンビはこの世に存在しうるだろうか? 
人間の死体が起き上がり、生きている者を追い回すには、何が必要だろう? 
普段僕たちは、ゾンビなんてものは科学的に不可能だと考えている。
しかしここに、ゾンビが現実の世界に存在しうる方法が一つある。

ゾンビについて考察する前に、基本的な前提を決めておかなくてはならない。
まず、霊的な力によってゾンビが誕生する類の話は、無視する。
また宇宙線、謎の隕石、ロシアの衛星なども考慮しない。
ここで考察するのは生物学的要因、つまり感染によるゾンビの発生に絞られる。
もちろん小説や映画にはありとあらゆるゾンビのシナリオが存在するため、
一つの説でそれらすべてが完璧に説明できるということはない。

人間のゾンビ化においてまず考えるべき点は、基本的なゾンビの生理学である。
ほぼすべてのゾンビ・ストーリーにおいて、
ゾンビ達はケガや壊死などで身体的損傷の度合いが大きくなっても、
運動機能を失わないようである。
となると、彼らが動き続けられるよう、脳から体の各部位に神経情報を伝達し、
筋肉にエネルギーを供給するメカニズムが必要だ。

サイエンス・フィクションで最も一般的なゾンビの発生理由は、ウイルスである。
しかし、ウイルスやバクテリアへの感染で、
人間の体内に全身的な新しい身体構造が作られることはない。
というわけで、ウイルスは除外する。
その代わりに、崩壊していく人体を動かし続けるメカニズムの必要性は、
僕が考える最も有力な説への足がかりとなる―寄生菌の感染だ。

菌類(キノコ、カビ等)が人に感染することはすでにわかっている。
さらに、世界中の森林の多くに菌類のネットワークが存在することも。
これらの菌類ネットワークは樹木やその他の植物と共生関係を築き、養分を交換しあって相互に利益を得る。
ネットワークは非常に大きくなることもあり、
菌類ネットワークを介して植物から別の植物へ化学信号が伝達される可能性を示す研究も報告されている。
それなら、菌類がフィラメントとなって死体内部の血管機能や神経機能を担うこともできるはずだ。

これにより、次のようなシナリオが考えられる。

呼吸や食事、ゾンビに噛まれることなどによって、肉眼では見えない大きさの胞子が人間の体内に入る。
胞子は最終的に血流に乗って全身に行き渡り、その後は潜伏期間となる。
宿主の人間が死ぬと、死亡時に起きる体内の化学信号の変化
(正確には、化学信号が発されないこと)が引き金となって胞子が活動を再開し、成長を始める。
呼吸や通常の代謝が行われなくなった体内で、全身に成長した寄生菌のネットワークが筋肉に養分を運ぶ。

寄生菌ネットワークの一部は脳内にも成長し、延髄および小脳、
さらには視覚、聴覚、嗅覚などを司る脳の部位をつなぐインターフェースとなる。
菌類から放出される化学物質が、これら脳領域での基本的な反応を促す。
寄生菌/脳のインターフェースは神経細胞の電気信号を化学信号に変換することができ、
化学信号は身体の隅々まで伸びたネットワークを通じて伝達される。
この信号伝達は時間がかかり、不完全であるため、結果としてゾンビの動作はぎくしゃくしたものになる。
そして宿主の脳に依存して活動する仕組みにより、
ゾンビの脳や脊髄に多大なダメージを与えることで完全に無力化できる「ヘッドショット」現象が成り立つのである。

ここでゾンビの代謝の問題が残る。
ゾンビたちは身体活動に必要な栄養素、さらには寄生菌のライフサイクルに必要な栄養素をどこから摂取するのだろう?
これはゾンビが四六時中、果てしなく肉を欲し続けることから簡単に説明がつく。
寄生菌ネットワークにも肉を代謝する手段は必要だが、ゾンビは人間の消化器系が使えなくても問題ないようだ。

もしかしたらこの種の菌類は、
食肉植物と同じような方法で肉からエネルギーと栄養素を抽出する手段を進化によって得ているかもしれない。
ゾンビの噛むことへの欲求から、実際に摂取される肉は期せずして残りカス程度である可能性もある。
その場合、寄生菌は腐敗する宿主本体の有機物質からエネルギーを得るので、
ゾンビの活動期限も相応に短くなる
(加えて、身体構造の崩壊もいずれは寄生菌ネットワークが支えられる限度を超える)。

切断された身体の一部が勝手に動く等の現象は、ありえないと思っていい。

さて、これで寄生菌ゾンビのもっともらしい理論が出来上がったとしよう。
では、この病気はどうやって蔓延するのだろう? 
あらゆる生物の目的は子孫を残すまで生き続けることだが、
病原体の多くは宿主に死をもたらす性質のせいで、限定的にしか広がることができない。
繁殖する機会を持つ前に宿主が死んでしまうからだ。

この点で、ゾンビ寄生菌の元になる菌類の発達にも2通りが考えられる。
1つは、ほ乳類の消化機能を利用して移動する寄生菌のケース。
動物が胞子のついた菌類を食べ、その後どこか別の場所で胞子を排泄する。
一部の胞子は突然変異して宿主の体内にいる間に発芽するが、多くの場合は宿主の免疫システムによって破壊されてしまう。
その問題を避けるため、突然変異を繰り返した胞子は、宿主が死んでから発芽するようさらに進化する可能性がある。

もう1つは、宿主が短期間で死んでしまうような、攻撃性の強い寄生菌だ。
しかしこの系統は、突然変異した胞子の系統より繁殖する機会が少ない。

もちろん、寄生菌が宿主の死後に活動を始めることと、死んだ宿主が立ち上がって周囲を襲い始めることは、まったく別の話である。
この2つの間には多くの進化の段階が存在するため、この寄生菌は人ではなく動物の体内で発達したと考えるのが自然だろう。

ゾンビ寄生菌の元となる菌類が、雑食動物である豚に食べられたとしよう。
多数の豚が押し込められた養豚場なら、寄生菌が分散して突然変異を繰り返すにはぴったりの場所だ。
ずさんな管理のために死んだ豚が気づかれずに放置されれば、菌が死後の体内で活動を開始する。
死んだ豚との接触により、他の豚も死後に活動を開始するタイプの寄生菌に感染し、それがまた周囲の豚の間で広まっていく。
これらの豚から人間への感染経路は、説明しなくても明らかだろう。

あるとき近くの豚に胞子をうつすために、(寄生菌に操られた)豚の死体が噛みつく動作をするようになる。
動く死体への進化だ。
噛みつくと同時にビクッと痙攣するようになればさらに効果大。
そして何世代も経て、死後の宿主を完全に動かせる状態にまで寄生菌が進化する。
こうして、さらなる繁殖への壁となっていた宿主の死が、胞子をバラまくための動くプラットフォームというアドバンテージに変わるのだ。
ゾンビが何にでも噛みつこうとするのは、元はもしかしたら胞子の分散だけが目的で、
口に入った肉を代謝できるようになるのはもっと後かもしれない。
そういった機能の発達が可能なら、寄生菌による神経網が緻密になり、
動きがより正確で、全力で走れるゾンビが出てきてもおかしくない。

宿主の行動まで操る寄生体などありえないように思えるが、これが現実の動物界にすでに存在している。
寄生バチの何種類かは宿主(ハチ、アリ、毛虫等)の行動パターンをプログラムし直し、
寄生バチに有益な行動をするよう操ることができる。
この場合の宿主は死んでいないが、複雑な化学作用による乗っ取りが自然界で起こりうることを示している。

手遅れになる前に、科学者が有効な対ゾンビ殺菌剤を開発できるといいのだが。
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