勇者「冒険の書が完結しない」 E

66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:35:55.50 ID:cK6dvDWr0
勇者「ちなみに呪文を書いた紙は、当然ながら過去の時間に持ち込めないからな」

勇者「オレがその呪文を覚えるしかない。つーわけで書いたらオレのところまで持ってきてくれ」

僧侶「ええっ。い、いまここで確認するのですかっ?」

勇者「じゃないと間違えていたとき後々面倒になるしな」

僧侶「え、ええっと。ええっと……」

戦士「うがー思いつかねえ!」

賢者「できました」

僧侶「ええっ」

勇者「さすが賢者早い、どれどれ。……? これが呪文か?」

賢者「まぁ呪文です。多分過去の私は分かります」

勇者「はぁ。お前にとっては何か意味深いものなんだろうな」

賢者「ちゃんと今の私からのメッセージであることを伝えてくださいね」

勇者「分かった」

賢者「また、その呪文はできるだけ練習はしないでくださいね」

勇者「? 分かった。……うーんやっぱり分からん。賢者の考えることは」


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:40:11.97 ID:cK6dvDWr0
僧侶「……ゆ、勇者様、できました!」

勇者「おし見せてみろ」

僧侶「は、はいっ」

勇者「よし覚えた。ちなみにこれ、何が?」

僧侶「あ、や、やっぱり分かりませんよね?」

勇者「まぁオレが知らない方が都合がいいけどな」

僧侶「そ、それでいいんです!」

勇者「で、戦士。あとはお前だけだが」 僧侶「えっ終わり……」

戦士「んーこれしか思いつかなかった!」

勇者「あまり凝ったのは期待してないが見せてみろ」

勇者「……。お前これは誰の言葉だ?」

戦士「親父の遺言だ! 俺と親父しか知らんはずだ!」

勇者「そうか……それならそうと事前に言ってくれりゃよかったのに」

戦士「膳立てはいらねえ! 自分の実力じゃねーとな!」

勇者「そうか。お前はバカだけど、いいバカだな」  戦士「あんっ!?」


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:43:06.68 ID:cK6dvDWr0
勇者「約束の30万ゴールドだ。これ全部お前のな」

戦士「ほほーい! こんだけありゃ当分暮らしには困らねぇ!」

賢者「それで勇者様、今後どうするのですか」

勇者「考える。もしまた巻き戻しが起こってしまった場合を想定して」

賢者「もし起こらなければ?」

勇者「……そのときも考えなくちゃならない」

勇者「さすがに一生ここに住む訳にもいかないし、かといって城に戻るのもはばかられるし」

賢者「私は別にここに骨をうずめても構いませんが。賢者の隠遁生活など珍しくないですから」

僧侶「わ、私も……皆さんが残るなら、私も残ります!」

勇者「ありがとう。まあでも、とりあえず一日ぐらい様子をみてからの話だな」

勇者(何事も起こらなければ、それで冒険の書は暫定的ながら攻略成功だ)

勇者(正解は魔王討伐後の王への謁見を回避することだった、ということになる)

勇者(……けれど、どうもそんなことで決着がつくとは思えないんだよな)

戦士「あ!? ここから出してもらえないんじゃーこんな大金意味ねーじゃん!」

戦士「意味ねーじゃんっ!!」  勇者「うるさい静かにしろ」


71: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/07/30(土) 01:44:59.92 ID:f0cdIzRm0
戦士がバカかわいいwww


72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:46:13.65 ID:cK6dvDWr0
賢者「勇者さん、一つ提案があります」

勇者「なんだ?」

賢者「その前に確かめておきたいのですが、今回巻き戻しが起こらなかったとして」

賢者「勇者さんはこれからここで暮らしていくことに抵抗はないのですか?」

僧侶「!」

戦士「そうだよ! なんで救世主ご一行がこんなヘンピなトコでひっそり暮らさないといけないんだよ!」

賢者「どうなのですか勇者さん」

勇者「そうだなぁ。オレはこれから先、平和な時間が過ごせればそれで満足だよ」

勇者「そりゃーオレだって帰るべき場所はあるよ? でも、時間を巻き戻される方が嫌なんだよな」

勇者「おかげで魔王との戦いはずいぶん楽になったけど、全部パァになるってのに慣れた訳じゃない」

勇者「なにより『今この場で』語りあっているみんなと別れるのが辛いよ。だから現状が保てるなら、それでいいんだ」

僧侶「勇者様っ……!」

戦士「勇者……お前……もう一回説明してくれ! いいこと言ったんだろうが、よく分からんかった……!」

賢者「分かりました。提案というのは大したことではありません」

賢者「その冒険の書、いっそのこと焼き払ってはいかがでしょうか?」 勇者「!」


75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:49:27.79 ID:cK6dvDWr0
賢者「冒険の書が巻き戻しのカギというなら、今その根源を断ってしまえばいいのでは?」

賢者「勇者さんは今後再び、時間の巻き戻しが起こる可能性を危惧しているようにみえますが」

賢者「その憂いも冒険の書がいつまでも手元にあるせいかもしれません」

勇者「なるほど……」

賢者「もちろん、冒険の書を抹消することも巻き戻しの引き金だった、などの危険はないとは言い切れませんが」

賢者「少なくとも『今』の冒険の書は、各地の王の反応から分かるように効力を失っています」

賢者「よってさしたる影響はないと私は思います。それは無意味の裏返しですが、試してみる価値はあるかと」

勇者「冒険の書の……抹消。その発想には至れなかったな」

勇者「オレは冒険の書を完結させることばかり考えていたが、こいつはもともと完結し得ない物なのかもしれないな……」



僧侶「勇者様!」

勇者「どうした?」

僧侶「そろそろご飯にしませんか? この島、身体にいい薬草がたくさん生えているんですよっ」

戦士「腹減った! 魚獲ってきた! 食う!」

勇者「ああ……頼む!」


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:55:50.08 ID:cK6dvDWr0
ゆうしゃは メラを となえた! ▼

ぼうけんのしょは あとかたもなくもえつきた! ▼



勇者「……何も起こらないな」

賢者「はい。これでループ問題が解決したかどうかは分かりませんが」

僧侶「みなさん出来ましたっ」

勇者「おおっ早いな」

戦士「魚! 焼いた! みんなで食う!」

賢者「先ほど島の周りを軽く調べてみましたが、この気候が続けばしばらくは生活に困らないですね」

僧侶「じゃあこれから皆さんは、そっそのっ……家族ですねっ」

勇者「家族……そういえば賢者も僧侶も孤児だったな」

僧侶「はいっ、だから私、嬉しくてっ」  賢者「家族。遠い言葉です」

戦士「家族!? はっ、俺は今まで一体何を! かあちゃん……」

勇者(……ここで生活していくのに先行きの不安もなさそうだ)

勇者(……本当にこれで終わりなのか……?)


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:52:17.47 ID:UhnTKXyt0
これは嫌な予感がするな…


84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 01:59:05.18 ID:cK6dvDWr0
――

【王の間】

王「ふむ……勇者一行はいまだ帰らぬか……」

兵士「予定の式典はいかがしましょう?」

王「いたしかたない、敢行せよ。後日勇者が報告に参じた暁に、改めて式を執り行えばよい」

兵士「はっ! では……」

王「うむ。皆のもの!」

王「この度は勇者の活躍によりついに魔王は打ち倒され、害悪な魔物なき平和な世が訪れた!」

王「もはや魔王の歴史は終わった! 人の子の勝利に祝福せよ! 勇者を称えよ!」

王「そうじゃ、この大役を果たした勇者を称えよ! そしてその記憶を末代まで刻み続けるがよい!」

ワー ワー ワー 勇者バンザーイ ワー ワー ワー 



そして でんせつが はじまった!





85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 02:00:36.07 ID:yqXPpD5vO
なんというお役所仕事ww


88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 02:02:51.28 ID:vtTMDYJi0
ワロタ


89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 02:03:24.93 ID:cK6dvDWr0
王「よくぞ もどった!」

王「ではゆくがよい! ゆうしゃよ!」

勇者「……。……みんな……」

勇者(……直接王様との関わりがなくても、強制的に巻き戻されるのか。結局一日ももたなかった……)

戦士「前から思ってたけど、わざわざ王様の前で冒険の書に記録するのになんの意味があんのかねー」

戦士「だってそうだろ? そんなもん俺らで勝手に書けばいいじゃん」

勇者「それでは意味がないんだ」  戦士「ああ?」

勇者「役目を与えられた者が記録しなければ、冒険の書は機能しない」

僧侶「えっ? 勇者様?」

賢者「……王様が、何者かに役目を与えられているというのですか」

勇者「ああ。そしてオレ達にも役目が与えられている。それを果たしてしまうと、どうあがいても物語は終わってしまう」

戦士「おい勇者! もっと分かりやすく教えてくれ10文字くらいで!」

勇者「まずはやどにむかおう」  戦士「お前そりゃぴったり10文字だけども!」

勇者(燃やしたはずの冒険の書が手元にある。過去の冒険の書なんだから、考えてみれば当然か)

勇者(さて、そろそろ打つ手に窮してきたな……)


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/30(土) 02:20:20.28 ID:cK6dvDWr0
――

【宿屋】

勇者「てっとり早く話そう。実はオレはもう、三度も魔王撃破を経験している」

戦士「は?」  僧侶「えっ?」  賢者「なんですって」

勇者「そしてさきほど王様の前で記録した瞬間をスタート地点として」

勇者「魔王撃破後の(おそらく)王の祝典をゴール地点に時間が巻き戻されるという、ループ状態に遭っている」

勇者「元凶はこの冒険の書だ。このループを脱出するには――」

戦士「ちょちょちょちょっと待て! 完全に意味が分からん!」

僧侶「そ、そうですよっ、勇者様が何を言ってるのか私にはさっぱり……」

賢者「言っていることは理解できますが、話の見通しがありません。根拠となる材料を」

勇者「あ、ああそうだった。すまない、いつの間にか焦っていたみたいだ」

勇者「まずはオレの言っていることを信用してくれ。そのための『呪文』は用意してある」

戦士「呪文ん?」

勇者「ああ。未来のみんながオレに教えてくれた合言葉だ」

勇者「一人ひとり違うから……これから一人ずつ別室にきてくれ。プライバシーは守ろう」

勇者「冒険の書が完結しない」 Fへ続く
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